2016年4月25日月曜日

【上毛電気鉄道撮影記事】いざ大胡! 「上州の野武士」デハ101出陣なり(その1)


■上毛電気鉄道イベントは小さなお友だちでいっぱい
上毛電気鉄道(以下、上毛電鉄もしくは上電と略)中央前橋から乗った西桐生行き下り電車には、小さな子どものいる親子連れで座席が埋まっていた。列車は城東、三俣、片貝と前橋の市街地で少しずつ子どもたちを乗せるので、車内がいつもよりも明るく賑やかだ。このようすを見ていて私はなんだかうれしくなった。子ども向けの無料乗車券も配布しているようだし、「電車の乗り方教室」も開催されている。

大胡電車庫のイベントはこうして地域に根づいた「お祭り」にしようと頑張っているところに感心する。鉄道イベントでは、次の世代が「鉄道に乗ることは楽しい」ことを知ってくれることがだいじなのだもの。とくに、乗用車普及率が高い地方ではね。

みなさんの会話を聞くともなしに聞いていると、ふだんは自家用車で移動する家族連れが多いようだった。こうして列車に乗ることも非日常のレジャーなのだろう。東京圏でも郊外や地方都市で暮らすならば、小さい子どもがいる家庭ではとくに、通勤や通学、日常生活のライフスタイルがすでに自家用車を中心にしないと、成り立ちにくい。そういうひとたちの生活に鉄道を組み込むことはとてもむずかしいだろう。けれど、利用したくなる付加価値があるのならば、こうして集客はできるのだと思わされた。そのための鉄道会社の各社の苦労は想像すると頭がさがる。

あえていえば、列車の写真を撮るなどというのはむしろ、「お邪魔して撮らせてもらっている」と感謝すべきなのではないかな。少なくとも、いばることではない。

■大きなお友だちはさらに列車に乗り続ける
さて、だいじな小さなお客さんたちが大胡で降りると、車内は桐生方面に出かける中高生と、カメラバッグとズームレンズのついた一眼レフ、もしくは高倍率ズームレンズを備えたレンズ一体式デジタルカメラを持った、私のような中高年の「大きなお友だち」だけになる。

外出する中高生が多いのは本日4月24日は日曜日だからで、カメラバッグを持った中高年の大きなお友だちが多いのは、大胡電車庫のイベントに合わせて「上州の野武士」こと古豪デハ101号車が走るから。すでにデハ101は大胡を出庫し、西桐生方面にいる。私は自宅を出るのをしばしためらったために、昨年よりも遅いスタートだ。

古い電車が好きな私が、「営業運転ができる釣りかけ駆動の電車」が走るのになぜ訪問をためらったのか。それは……自宅を出たときはしとしと雨で、前橋地方の天気予報は「曇り」だったから……。あれれ。行動の理由が「太陽がまぶしかったから」だと不条理なのに、「雨だったから」だともしかしたら、わりと合理的に聞こえる気がするな。気のせいか。

正確にいうと、空が真っ白に写ることが予想できて、おまけに上電沿線で空を白くしない背景の場所で、気に入っている場所をあまり思いつくことができなかったからなのだ。一昨年昨年はどちらも好天で、とくに昨年は桃ノ木川橋梁へいたる築堤で青空を背に撮ることができて、とても印象的だった。でも、今年はこの空だとなあ、と。

■晴れた日と曇りの日では撮り方は帰るべき
記録のために特定の列車の編成写真を撮る、という目的ではないならば、晴天時と曇天時でふさわしい撮影方法はことなるというのが私の意見だ。模型の資料にするとか、ディテールを描くことが必要ならば、陰影が強いと描けない部分が多い。

けれど、私はうまく実行できているかどうかはひとまずおいておいて、もう少し印象的にねらいたい。そうすると、白い空を画面に大きく入れたくはない。なぜなら、不必要に目を引くくせに情報がない部分が画面内にあるというのは、見る人にとって被写体に集中しづらい写真に仕上がってしまう。

いや、これはべつに私の考えだした独創的な意見でもなんでもない。いつのどの記事であったかを失念しているが、たしか広田尚敬さんの本で見た記憶がある。そして、自然風景を印象的に撮る写真家たちも気にしていることだ。

フィルム時代のカメラマンがCCフィルターやハーフNDフィルターを使ったのは、画面内に白く抜けてしまい、不用意に人目を引いてしまう場所を作らないという理由もあるのだ。とくにこれは、納品した写真が印刷されるひとが意識するものかも。商業印刷のCMYKの領域はデジタルカメラのRGBよりもずっと狭いから、紙白とスミベタになる部分を画面内に不用意に作らないようにしているからだ。趣味の写真で気にするべきでもないか。

もっとも、特定の列車を撮るには天候や撮影時間を撮影する側の意図どおりには選びにくいということはもちろんある。だからこそ、場所選びと画角、レンズの選択はとても重要になるのだ。

■二葉亭四迷か私は
などさんざん書いているくせに……けっきょくは白い空をたくさん映し込んだ写真を量産している私なのだ。いいわけをすれば、ここ数ヶ月のあいだ列車を撮る回数が少なくて、「撮影地の現場の勘」やインスピレーションが鈍っていることを痛感させられた。いろいろなことはさぼってはいけないな。私は貝になりた……(以下略)

さて、出発が遅かったことで桐生方の撮影地にまにあわないと判断して、沿線のナノハナの具合を見て降りたのは樋越だ。上り中央前橋方向には下り勾配で曲線になるのを見て、うまく使えないかと考えた。いいのですけれど。画面内の花の位置と架線柱を横位置で私にはうまく構成できず……白い空ががっつり入っているじゃんか!



その後は、私が好きな新川の手前の勾配へ行った。正面から撮るには踏切のすき間から撮ることになるので、撮影者がほかにいると撮りづらい。勾配を使えば白い空をなんとか写さないですむかも! と思い行ってみると、私しかいなかった。西桐生行きの2往復めだからな。まず、715-725の5番編成『北原ゆうき号』で試写すると、背景の白い建物も、保育園の通園バスも隠すことができた。空の画面内の面積は多少減らすことはできた……。



■列車通過直前にアングルを変えてはだめ
ところで、みなさんには撮影時に心がけることや、ジンクスめいたものはお持ちではないだろうか。私にはいくつかある。それは、「撮影1分前のためらいは悪魔のささやき」とでもいうもの。列車を待ち構えて撮るのに、できれば私は早めに到着しておき、構図、レンズワーク、露出を何度も変えて試写を繰り返すのがつねだ。ねらった列車が来る前には迷わなくなるほど試写する。そうして、どう撮るかを決めてもときにはしつこい迷いが去らず、列車通過直前に「ええい!」とためらいを振り払いながら撮る。この迷いは、それに従うと結局はいいことがないというのがいままで得た教訓だ。レリーズ位置やレンズワークが散漫になり、「チキン」な写真になることが多いのだ。

ところがね、そのことを忘れてデハ101の通過直前に撮影高度を下げてみたのですよ。そうしたらほら、白い空の面積が増えちゃった! やはり、一度決めたことを迷ってはダメ。ぶれんなよ! ということ。そもそも、この場所で撮ったこともアレだったかもしれない。(というわけで、続きます)



【撮影データ】
Nikon D7200 /AI AF Zoom-Nikkor 80-200mm f/2.8D ED <NEW>/RAW+JPEG/Nikon Capture NX-D/Adobe Photoshop CC/Google Nik Analog Efex Pro2

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