2012年9月3日月曜日

【東武野田線&8111編成撮影記事】哀愁の町にリバイバルカラー電車が走るのだ


■「私鉄の103系」のこと
京在住の鉄道少年だった私。途中の中断期間はあっても、鉄道への興味は完全には失われていなかったはずなのに、首都圏でさえ残念ながら未訪問の路線が多い。東武野田線もそのひとつ。いや、幼稚園のころに大宮~大宮公園の2駅は乗ったことがあり、おぼろげにはおぼえているのだが。

そんな野田線はここ最近気になる路線ではあった。かつて「私鉄の103系」と呼ばれて私鉄最多の製造数を誇り、東武鉄道のどこへ行っても当たり前のように走っていて、そのくせ愛想のない顔つきのいわゆる「東武顔」で、あまりおもしろみもなかったはずの8000系電車がどんどん数を減らしているのは、このブログへ来てくださる鉄仲間のみなさんには、いまさら語る必要もないことだろう。でも、この8000系電車だけが走っている最後の牙城である野田線に、今年度中に新型車両が導入されると報じられているから、やっぱり気にはなっていた。


■東武鉄道もけっこう好きなんだよ
もっとも、私にとって親しい「東武鉄道」といえば東上線をさす。そんな、かつての「8000系王国」東上線にも8000系電車はもはや4編成しか残っていないとか。小川町~寄居の区間運転を行う8000系ワンマン車は健在ではある。秩父鉄道へ行く行き帰りに自動放送のおばさ……失礼、「妙齢の女性の落ち着いた声」を耳にし、「びゃんびゃんびゃんびゃん」と鳴る踏切警報機の音を聞くたびに「ああ、東武に乗っているなあ」とちょっとした感慨にふける。なにせ東武もけっこう好きなんだ。




そのくせ、先日も秩父鉄道の行き帰りに川越市駅で8000系電車を見かけたり、小川町~寄居間のワンマン車に乗っては「ああ、撮らなくちゃ」と思いつつも、ついついいつでも撮れる気がしてさぼってしまうのが私のつねだ。基本的に怠惰なんだよな。どうしても「トリアージ」といいますか、やりくりできる時間内での優先順位があるから。秩父>西武>JR>東武、かなあ。おかげで、東上線の原型顔はむかしの写真以外は駅で撮った最後の8111編成くらいしか残せていない。そのことはちょっと後悔していたのだ。

■東武博物館所属の8111編成が走るだと!
さて、一昨日の夜のこと。世間の夏休みも終わりだなあ、とWeb上であれこれ見ていておどろいて飛び上がった。8111編成がかつてのベージュとオレンジの塗装をまとい、通過標識灯や昔の社紋と形式表示の切り抜き文字を復元して動体保存されることになり、大宮~東京スカイツリーを結ぶ団体臨時列車としては走っていると東武のニュースリリース(PDFファイルです)にあった。これには心底ぶったまげた。

マジですか!? 動体保存!? しかも、原型に近づけて復元!? 最近の東武鉄道、すげえ!




正直にいうと、最近まで東武鉄道のいう「保存」をあまり信用していなかった。長期留置したあげくに解体、というパターンだろうと思っていたからね。でも、東武博物館がリニューアルしたときに5700系電車を原型に復元したり、近江鉄道へ行ったイギリス・デッカー製電気機関車をピカピカにして展示したりと、思えば最近の東武は保存に関してものすごく力を入れているんだよね。疑ってすみませんでした。

となったら、時期に都合がつくなら行かないわけにはいくまい。それにしても、プレスリリース発表日が8月22日で、運転日が一週間後の8月29日~9月2日とは。沿線の混乱を避けるための措置なのだろうか。鉄道誌には告知が出たのかな。ふつうは、情報解禁日を設けてプレスリリースを事前配布するはずだ。鉄道誌にも記者クラブがあるというし。

■野田線沿線はなんだか『哀愁の町』なのだ
そうして「ほぼ」はじめて乗った東武野田線でロケハンをして降りた町は、私好みのちょっぴり眠そうな郊外の町だった。『哀愁の町』とはいつものように我ながらたとえがおおげさだったけど……いちおう説明しておきますと、この表現は椎名誠の小説の題名のパロディだ。

というのは都心へ行く若い女性と自転車で退屈そうに流している男たちがちらほらいて、散歩をする年配の人たちが多く目につく。「風渡野(ふっとの)」という読み方が想像つきづらい地名に興味を覚えたり。その由来は知ってびっくり。興味のある人は検索してみてくださいませ。

ありふれた首都圏近郊の町ではある。けれど、そんな雰囲気だから晴れていてとても気持ちがよかった。ロケハンして列車を待っている段階は、送り込み回送を撮るには逆光となるポジションでも、有名な撮影ポジションは同業者がたくさんいてもみなさんわりとおだやかだった。JRイベントとちがいのんびりしていていい。

子ども連れ一家や近所のシニアの女性たちが「なにかめずらしいのがくるの」などとたずねてきたので「オレンジとベージュのむかしの東武電車の塗装の電車が来るんですよ」などと教えた。するとみないちように「じゃあ待ってみよう」「え、それじゃああたしもカメラもってくるわ!」と何人も駆けつけて来たりして。ちょっとおもしろい。自分が行列を作るひとみたいでしょ。野田線は沿線住民に愛されているのかも。

■待望の列車はゲリラ豪雨を連れてきた
ところが、お目当ての8111編成が来る直前から雨に見舞われましてね。それも、わりと本格的なゲリラ豪雨。しかも雷も鳴るし。そして8111編成の通過後は雨脚が激しさを増した。






雷雨のせいではないけど、正直言えば絵的にヘタレですな。それでも、ピカピカに磨き上げられ、通過標識灯や昔の切り文字の形式表記などとてもなつかしい。もっとも、私は生まれて物心ついたときには東武電車はセイジクリームだった。今の白地に水色と青のラインになるまえの、「レアチーズケーキ」や「バニラアイス」もしくは「カステラ電車」のことだ。だから、できたらセイジクリームのほうがうれしい。とはいえ、本でしか見たことのないベージュとオレンジの塗装を見られておどろいたし、カッコいいなあと感心させられた。



■野田線が気に入ったのだ
野田線の雰囲気は気に入ったから、雷雨が来ないときにまた来よう。いいことを知った気分だ。それにしても、むかしの吊り掛け式駆動の3000系電車や5000系電車がいたころはもっとずっといい雰囲気だったのだろう。


【追記】:ねえ、東武沿線あちこちにあるこのお店。「ルージュ」って"rouge"ってつづりませんでしたっけ。ZAKKAもローマ字だし。でもなんだかかわいいかも。ほめてるよ!