2010年11月1日月曜日

【しなの鉄道2010年11月】169系S52編成復活湘南色編成撮影記(その1)


■しなの鉄道始発列車にて
長野からしなの鉄道の始発列車に揺られる。窓の外はまだ暗い。そして、戸倉に列車が到着したところで目を凝らすと、まだ夜が明けきらない駅構内で、車内灯をこうこうと灯して169系S52編成が出発準備をしていたのが見えた。S52編成は他の編成と切り離されてホームの上り方面側にいる。これはもう今日の「しなのサンライズ」号はS52編成だということはまちがいあるまい。

■湘南色塗装復活と聞いたから
しなの鉄道を撮りにめずらしく来た。信越線時代には通過したことがあるだけだし、3セク転換後は観光ついでに何度か来ただけ。S52編成が最初に湘南色に塗装変更されたころに、諏訪に泊まりがけの出張で来た翌日に少し写した程度で、親近感と興味はあっても土地勘はなく、さらに、そのころは家庭の事情もあり私ひとりだけでは好き勝手に出かけることもあまりできなかった。そうこうしているうちに、S52編成はしなの鉄道色に戻されてしまった。

そこへ、再度の湘南色の復活という知らせだ。そして、休みと自由になるスケジュールを調整しているうちに、運よく自分が動ける土曜日を見つけた。この日は、リバイバル快速『信州』号が走るというものの、行く機会が少ない鉄道であれば、平日朝のみ走る快速『しなのサンライズ』号も撮ってみたいと思っていた。そこで思い切って、ちょうどそのころから運行を開始したアルピコバスの深夜便(新宿西口23時20分発、長野駅着4時52分)を利用することにして、しなの鉄道沿線に出かけてみたというわけだ。

■本日の『しなのサンライズ』号は湘南色のみの3両編成に当確!
鉄のお仲間のみなさんならおそらくご存知のように、復活湘南色塗装(2010年11月当時)のしなの鉄道の至宝169系S52編成がしなの鉄道標準色編成と切り離されて上り上田・軽井沢方面にむけて出発準備をしていたということは、今日の快速「しなのサンライズ」号は9両編成で湘南色+しなの鉄道標準色ではなく、3両編成の湘南色単独ということだ。

しなの鉄道Webサイトにある169系S52編成の行路表によれば、今日は午前中に快速『しなのサンライズ』号として小諸から長野へ行き、長野から戸倉まで戻ったのちに午後は上田まで回送されて上田から軽井沢まで快速『リバイバル信州』号として走る。軽井沢からは小諸まで1往復して、夕方小諸行きになる。今日はつまり、S52編成は長野~軽井沢の全区間を走る。ということは、撮影できるチャンスがたくさんある。

しかも、小諸始発や上田始発、戸倉止まりや小諸止まりという運行があるということは、必然的に送り込みや返却の回送があるということだ。

さらに、直前になって知ったのは、何でも旧型客車の団体臨時列車『レトロ軽井沢』号が運行されるとのこと。しかも、午後の『リバイバル信州』号と上田や小諸で並ぶように続行して走るようダイヤが組まれていて、『リバイバル信州』号の1往復のあと夕方まで軽井沢駅で並べて展示されるというのだ。念入りですなあ、しなの鉄道さん&JRE長野支社さん!

私の訪問目的はこの湘南色編成のほうなので、『レトロ軽井沢』号との並びは正直いうと人出が怖い。なにしろ国鉄型でしょう。どうしても人出が増える。でも、そんな人出が嫌なら、「レトロ軽井沢」号が走る前の運用を狙うために夜討ち朝駆けしかない。私はしなのサンライズ号を送り込み回送から撮るためにしなの鉄道の始発に乗りたかったのだ。

■日の出の時刻を計算に入れていなかった
しかしまあ、なにごとも思惑通りには必ずしもいかないのが世のつね……なのかな。戸倉にいたS52編成を見てやる気が俄然出たものの、計算外だったのは天候と日の出の時間。うかつすぎるだろ自分。しかもしとしと雨だかななおさら暗い。坂城で列車を6時ごろに降りてから撮影準備をしながら悩んだのが露出。暗くて露出が稼げない……。

最新のデジタル一眼レフなら、そのころでもISO1,600は実用範囲だ。でも私の愛用するD2Xは、ISO400まではキレイだけど、それ以上はせいぜいISO640までというところ。ISO1,600は緊急用といいますか。あえて使いたい画質ではない。

しかし、ここまで来て撮らないわけにはいかない。私のなかの「脳内バーチャル鬼デスク」が言うのです。撮れるまで帰ってくるな! 特落ちは許さんぞ! って。趣味の撮影でさえ妙な職業倫理と責任感にしばられる真面目なひとなのですよ、私。そして、こうなればいまこそが緊急事態と判断しまして。ためらいながらもISO1,600を選択。列車の速度が見かけ上落ちるカーブを望遠レンズで撮る作戦でいくことにした。

待てども雨脚は弱まらず、明るさもあまり変わらない。ほどなくして背後の踏切が鳴り始め、電車のタイフォンが聞こえてトンネル内がヘッドライトで明るくなりはじめた。来たぜ、上り回送! S52編成単独だ! 

坂城の手前のトンネルを出てきたところを、むりやり写した

ヘッドライトの明るさがすごくまぶしいけど、なんとか撮れた。撮影者は私ひとりだけ。こいつが戻ってくるころには少しは明るくなるといいなあ。

■とりあえず撮れることがわかったので次は本命
こんどは下り列車を撮るために濡れながら歩いて移動する。それにしても風が強くて傘が役に立たない。次の撮影地にも一番乗りできたので三脚を立ててから雨宿りする。寒いなあ。犬の散歩をさせているおばさんに笑われた。この天気で汽車を撮るんですか! って。まあねばかっぽいよね。でもさ、ひととはちがういい写真を撮りたいなら、ひとのしない努力も少しはしないといけない。

夜がはっきり明けても天気はまったく回復せず、風が強くて傘が役に立たないのでレンズがすぐに濡れてしまいファインダーも曇る。『しなのサンライズ』号の通過まえに何本か試し撮りをする。そうしてなんとかISO640で撮れる明るさになったころ、待望の『しなのサンライズ号』がやって来る時間になった。

ところが……あれれ、下り列車を待ち構えていた背後からノロノロ走る上り列車の気配がする。篠ノ井にいたEF64形1000番台重連の坂城行き石油列車だった。まさかの離合か。貨物列車のことを忘れてたよ。いろいろ私はうかつすぎるな。

そこへトンネルから『しなのサンライズ』号の警笛が聞こえてきた。どうなるのかなあ、3両編成を正面がちに狙うから、貨物列車が来ても悪くないよなあと考えていたら、まず『しなのサンライズ』号がファインダー内に飛び込んできた。いっぽうの貨物列車はファインダーにはまだ入ってこない。もう夢中でレリーズした。

古いレンズとカメラで撮ったせいか、ヘッドライトが大目玉みたいに

手応えあり! これで私のなかの「脳内バーチャル鬼デスク」にも報告できる。

数十秒差でこんどはロクヨンセンさま重連をシュート!

そして、『しなのサンライズ』号が通過してすぐさま、貨物列車は加速を始めた。うなるロクヨンセン。区名札は愛知機関区の「愛」! 愛だろ、愛。まるで直江兼続の兜みたいだな。もしかして貨物列車の運転士さんはわざと減速してくれたのだろうか。まさか。でも、そうなのだろうなあ。ともあれ、素敵なショーをありがとう、機関士さん! 

結局、下り『しなのサンライズ』号をここで写した撮影者はやはり私ひとりだけ。雨の中のこのこ線路際にいるおばかさんは私くらいでいいか。おかげで、こんな迫力あるシーンを独り占めさせていただきました! どうもごちそうさま。

【撮影データ】
Nikon D2X・AI AF Zoom-Nikkor 80-200mm f/2.8D ED <NEW>、AI AF Nikkor ED 300mm F4S(IF)・ISO640〜1,600・RAW(Capture NX2にて現像)・撮影地:しなの鉄道坂城〜戸倉(2010年10月撮影)