2016年9月18日日曜日

【真岡鐵道撮影記事】「どういう印象」を絵にするか


■雨夜の品定めのように
すっかり9月の長雨にたたられて、ここ最近は雨の写真ばかり量産している。趣味写真ではないものではちょっと困ることがある。晴れた日の写真がどうしてもほしかったら、どこか晴れているところに行かなくてはいけないな。そう思いながら過去の写真を見つつ、どんな写真にしたいか、どんな写真を撮るかどうかのイメージトレーニングをしているわけだ。

さて、このところ何度か真岡鐵道へ行ったのは、正直に言うとC12を撮りたかったというばかりではない。C12と50系客車は理由のひとつでしかないのだ。

■「撮りたい絵」のために
真岡鐵道に通ったのは、「森や木立のなかを抜ける小さい蒸気機関車の牽引する列車」という絵を撮りたかったから。まずは撮りたい印象や絵柄が先にあり、そのうえでそれを具現化する撮影地や日時を選んだということになる。趣味の写真ではないからだけどな。


いま思えば私が初めて真岡鐵道の蒸気機関車を撮ったときは、車を運転する知人に送迎してもらったために列車に乗ることができず、並走する道路からの印象だけで鉄道を見ていた。私の得たそれは北関東の都市近郊の田畑のなかを走る鉄道、というありきたりなものだった。送迎はとてもありがたかったけれど、私としてはもう少し細かく印象を得ておきたい。そして、そういった「北関東の田畑のなかを走る」絵柄をじつに多く見るので、それ以外のありきたりではない絵にどうやって仕上げていいのか、悩まされた。いわゆる「お立ち台」とよばれる有名撮影地で撮るとそうなる。

■ロケハンは自分の撮りたい絵柄の引き出しを増やす作業、かも
ところが、この春に列車に乗ってみると真岡鐵道の印象は大きく変わった。意外とアップダウンがあり、木立のなかを抜ける区間がいくつかあることがとてもよかった。並行する道路とちがい線路際には開けていない場所があるのだ。

この事実は衝撃的だった。インターネット(若い子たちであればスマートフォン)だけで見つけて自動車に乗って撮影に来て、列車に乗らないとわからないことがたくさんある。いや、列車に乗ってロケハンすることは昔は当たり前だったのだ。思えば自分が鉄道利用で行ってきたロケハンとは、沿線の特徴を見つけ出しながら、自分の撮りたい絵を時間をかけて探す作業だったのだろう。


少なくとも私自身はもし自動車で撮影に来るならば初回以降だろうか。あるいはせめて、往復の移動は自動車でも、駐車違反にならない場所にきちんと駐車して、時間をかけて歩いてみるか、いちどは列車に乗ってみたい。そうしないと、その沿線の持つ特徴を自分なりに理解することもできないのではないかな。

■もっともこの常識はもはや通用しないところも
とはいえ、国内であっても北海道での撮影、あるいは大井川鐵道のような普通列車に乗ると撮影しづらい路線や、貨物専用線では列車に乗ってロケハンができない。だから、自動車を使って移動する撮影を全否定したいわけではない。

あ、そうか。自分がそういう路線にめったに行かないのは列車に乗れなくて、なかなか「撮りたい絵柄」が思い描けないからなのか。と思うとちょっと笑ってしまった。それはそれで不器用すぎる。列車を自動車をうまく組み合わせて利用して撮影できれば、それがベストなのだろうなあ。

■とにかく、いろいろな絵柄を見ておくこと
結局はいい写真を撮るには、仕上がりの絵柄の完成予想図を撮影時に持っておくことが大切だし、そのためには、鉄道に限らないでもさまざまな写真や映画、テレビ番組、絵画、アニメでも漫画でもいいけれど、いろいろなものを日頃から見ておいて、想像できる絵柄の数をたくさん持っておきたい。

ロケハンもその絵柄の数を増やす作業なのだ。ねらい通りに撮るには、その鉄道路線に関する知識と同時に、どういう絵柄がカッコいいか、印象的か、かわいいか、という自分の経験値を増やしていくほかないもの。あ、大前提としてその路線を好きになったほうがいいというのは、もちろん大切だ。

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