2016年11月7日月曜日

【秩父鉄道2010年1月】日没後に秩鉄リバイバルカラー1002編成を待ち構えて


■薄緑の内装と青い座席の電車
先日、少し古い映画を見ていた。すると登場人物が通勤電車に乗るシーンがあり、薄緑色の内装と青い座席、ドアコック表示があって、硬いコイルばね台車が車体を揺らすのを見ていて、そういえばこういう電車が昭和の通勤電車の典型だったし、もはや地方都市の限られた路線でしか見られないのだな、と改めて思っていた。

4扉ロングシートの国鉄型通勤電車のことを私たちよりずいぶん前の世代は「ゲタ電」と呼んだそうだけど、気軽に乗ることができる乗り物として日常的でありふれた存在すぎて、私には東京近郊から彼らが姿を消すころまでは、趣味の対象として見ることができなかった。日常的でありふれたものを趣味の対象にするのは、かなり高度な頭の体操だ。というのは、趣味とは仕事からはなれて純粋な自分だけの楽しみとして行うからこそ息抜きになる。そうなると非日常であるからこそ、かんたんに気分の転換にもなりやすい。だから、大抵の写真趣味人の被写体になるものはしばしば、自宅から離れたところにあるものなのだろう。

そう思えば、秩父鉄道1000系電車は私には非日常の存在であるからこそ、趣味の対象になったのかもしれない。

■秩父に通ったのはリバイバルカラーの1002編成がいるから
さて、その秩父鉄道1000系電車が7000系・7500系電車に置き換えられ始めたころ。2009年5月から秩鉄リバイバルカラーとして、1002編成が小豆とはだ色のツートンカラーをまとって走り始めてから、秩父鉄道には足繁く通った。

あのころは日没後までねばって線路際にいたものだ。当時使っていたカメラはNikon D2Xで、いまのカメラと比べると数世代もまえのカメラだから、高感度の性能はまだまだだったし、ダイナミックレンジが狭くてシャドウからディープシャドウへの階調のつながりがいまひとつよろしくなかった。自分の好みでいえば、ISO 640までしか使いたくはなかった。だからこそ、できるだけ開放F値の明るいレンズを使いたくて、単焦点レンズを多用したともいえる。


■薄暮の写真も撮ってみたかった
薄暮の写真は多いのは意図的でもある。昼間の写真にはどうしても既視感があるので、自分なりの写真にするには薄暮の時間に撮影するほうが容易にできたこと。デジタルカメラでは薄暮の撮影の難易度が下がったこと、さらにいえば「夜の列車」になんともいえないあこがれめいたものを感じるからだ。

そして、そう頻繁には訪問できなかったので、一度出かけたらできるだけ沿線にはりついていたからかも。



■いまよりもパッションはあったのか
このころの写真を見るとつたないのだけど……いまよりももしかしたらもっと無心に対象を追いかけている気もする。無理して追いかけたことで暗くてもけっこう写せるということ、暗いならば暗く写せばいいということを身に着けたことは、いま思えばとてもよかった。いまのほうがもっと上手に撮れるようではないといけないな。

【関連記事】
『ぼろフォト解決シリーズ043 Nikon D2Xで秩父鉄道を撮る!』発売中!(2015年3月10日)

【撮影データ】
Nikon D2X/AI AF Zoom-Nikkor 80-200mm f/2.8D ED <NEW>, AI AF Nikkor 35mm f/2D/RAW/Adobe Photoshop CC