2017年4月12日水曜日

【チラシの裏】「一眼レフ」のことをあれこれ


■雨の日に小人閑居として不善をなす
春らしく首都圏は週末からの雨続きで、たまったデスクワークを片づけながらふと、ひさしぶりに私物の機材を引っ張り出して、ほこりを払った。一昨年にD7200を導入してから「本務機」の座を明け渡して「補機」になったD7000……おっと、いかにも鉄っぽい言い方をしたぜ。「メイン機材」から「バックアップ用予備機材」にしたD7000ボディに、爪つき改造がなされているAi Nikkor 50mm F1.8Sを取りつけて、空シャッターを切っている。


どういうわけかわからないけれど……D7000を試用してしたころから、この組み合わせがどうしても自分にとって「うーん、なんだかカッコいい」と思わせるからだ。業務の撮影にはAFニッコールレンズを使うし、使いやすさはもちろんAFニッコールレンズとの組み合わせのほうがずっと上だ。このマニュアルフォーカスニッコールレンズとの組み合わせは、自分にとっての息抜きというか、いわば趣味の写真を撮るときに「持っているのが楽しい」という組み合わせだ。そういえば私、PENTAXのボディに小柄なLimitedレンズを装着するのも好きだった。Limitedレンズみたいなものはニッコールレンズにないからかも。

もっとも、PENTAXのLimitedレンズとは異なり、デジタル一眼レフの登場以前どころか、オートフォーカス以前のこの廉価版レンズで撮ると逆光には弱いし、絞り開放の絵は、ローパスフィルターがあって、おそらく高感度ノイズリダクションが強めにかかるためなのか、どちらかというとゆるい絵を吐くD7000と組み合わせると、かなりやわらかくてゆるやかな描写になる。いわば、人物をやわらかい印象に撮る場合などにこそ向く組み合わせといっていい。そのために、実をいうとローパスフィルターレスのD7200と組み合わせて撮影したことがいちどもない。我ながらふしぎだ。D7200は自分にとって「純粋な業務専用機種」だからなのかも。

■悪目立ちするのがいやになった
それにしても、心情の変化なのか、たんに年を取ってしまったからなのか。フラッグシップデジタル一眼レフボディも好きなのに、F2.8クラスの大口径ズームレンズを組み合わせると、あくまでも私の好みでは、という話ではあるけれど、どうもなんというか、その……いまひとつ趣味性を感じなられなくなってしまい……。もちろん、所有できないひがみなどでは毛頭ない。ほんとうですよ。

たとえば、フラッグシップデジタル一眼レフに単焦点レンズがついているのを見るとその持ち主に「作家先生」っぽさを感じることはある、ところが、大口径ズームレンズつきの機材を目にすると、その持ち主にはなんともこう「あ、お仕事どうもお疲れさまです!」「取材お疲れさま!」という気分になる(*)。もちろん、フラッグシップデジタル一眼レフと大口径ズームレンズの組み合わせは、業務の撮影でまよっているゆとりもないときは、失敗の可能性が減る心強い存在だとは思う。そうか、趣味的とは失敗する自由もあることかもしれないぞ!


■あれやこれやともやもやもや
そんなことを考えていて、最近またエントリークラスのデジタル一眼レフやフラッグシップクラスのミラーレス機をさわる機会もあって、いろいろ考えてしまった。

私が写真に興味を持った頃はフィルム一眼レフがオートフォーカス化される頃で、一眼レフ全盛期だった。だから私にはいわば「一眼レフ生まれの一眼レフ育ち、一眼レフが好きな奴はみな友だち」とでもいっていいような好みが根強くあり、いまでも見えのいい光学ファインダーとファインダースクリーンを持つ一眼レフが好きだ。距離計連動式カメラは苦手だし、デジタルカメラでも背面モニターしか持たない機種や、スマートフォンよりも、できれば電子ビューファインダーでもいいので、ファインダーのあるデジタルカメラのほうが使いやすいとも思う。

そんな根強い一眼レフ好きであると自認しているにもかかわらず……いや、だからこそ、ごく最近のデジタル一眼レフの進化の停滞を思うと考え込んでしまう。ここ数年の各社のデジタル一眼レフに画期的な新たな技術が盛り込まれた、という記憶がいまひとつない。

画像処理エンジンを最新型にして処理能力が向上した結果として、高感度画質が向上したとか、連続撮影速度が向上した、あるいはAFモジュールセンサーの改良やアルゴリズムの改良による、AF合焦率の向上、あるいはスマートフォンとの常時接続にBluetooth Low Energy(BLEもしくはBluetooth LE)を採用するなどの、着実な改良はされていることは理解しているつもりだ。着実な使い勝手の向上はほんとうにありがたい。それは偽らざる気持ちだ。けれど、とはいえそれ以外には……なにかあったかなあ。デジタル一眼レフはもはや成熟してしまった製品なのか。

■これからもすんごいのを出してくれよな
いっぽう、マイクロフォーサーズ規格のレンズ交換式カメラは、誕生したのが2008年とようやく10週年を迎えるところだ。また、35mmフルサイズやAPS-Cサイズセンサーの「ノンレフレックス(カメラ)」(ミラーレス機)もまだまだ誕生から日が浅い。そのために、まだまだ改良の余地があるのか、新しい機種になるほどに目を見張るような機能が盛り込まれていて、ウォッチしていて飽きさせない。新しい機種になるほどAF精度もどんどん高くなっていることを体感させられる。

さらに、フラッグシップ機にいたっては、いままではおそらく余裕がなかったであろう、シャッターショックを抑える構造の採用や音色のよさなどの「使い心地のよさ」にまで目が行き届くようになったのではないかと思わせるのだ。

こうなるといまのところ、目新しさに関してはデジタル一眼レフの旗色はよくないなあ。うーん。けれど、ユーザーとしてはデジタル一眼レフにもマイクロフォーサーズ規格をふくめたミラーレス機にも、どちらにも使っていて楽しい製品が生まれることを期待したいのだ。趣味性を期待しつつも、趣味性だけではないような驚きのあるカメラが増えるといいなあ。

*大口径ズームレンズつきの機材を目にすると、その持ち主にはなんともこう「あ、お仕事どうもお疲れさまです!」「取材お疲れさま!」という気分になる:フラッグシップ一眼レフについているのがF2.8ズームや高倍率ズームレンズだと、かつて私が月刊誌編集部員として取材先で見た、あるいは撮影のじゃまになるので戦ったクリップオンストロボが報道用ブラケットに載せてあり、外部電源ユニットもあってレンズフードにダイモテープで名前が貼ってあって、アルミ脚立を肩にかけている新聞社写真部員みたいだ。みな顔見知りで、スポーツ紙などの押しの強いカメラマンがフォトセッションタイムでその場を仕切る。脚立の上でレンズ交換をしてその足元にいた私の左肩にEF100-400mmかなにかの白レンズを落としてぶつけたカメラマンさん、あの機材は無事だったかなあ(半分嫌味)。あるいは婚礼写真の現場でお仕事をされている、スーツにデジタル一眼レフとF2.8ズームとディフューザーつきクリップオンストロボをさげた結婚式場の写場のカメラマン、もしくはそこに派遣されてきたスナップ写真請負会社所属カメラマンのみなさんのように見えて、どうもお仕事お疲れさまです! 頑張ってください! という気持ちになるのです。自分も似たような装備でそのどちらにもいたことがあるから。趣味で買ってオラオラいう道具ではないです。