2017年9月16日土曜日

【上信電鉄撮影記事】電車に揺られた日


■けだるい撮影行
なんとなくもの憂い気持ちで午後遅くに「頑張るぐんまの中小私鉄フェア2017」を訪れた日のことだ。本社前の会場でフェア開催記念1日乗車券を買ってから、すでに日が傾きかけているのを承知で上信電鉄の下り電車に乗った。

もし明るければなにか撮ってみようかな、けれどいつもと同じ写真も飽きたし、写真を撮れなくてもまあいいや……そんないいかげんな気持ちだ。高崎にやって来たのは、上州富岡行きのクモハ153-クモハ154のホワイトタイガーだった。

日が傾き、あたり一面が西日に染まるなかを列車はがたごとと走る。上信電鉄の電車に揺られるのはいつも楽しい。

■ギャルが休日の夕方に下仁田を目指すはずないだろ
そうして列車が走って山名も過ぎた途中駅でのことだ。これから下り方向に行くには都会的すぎる服装の若い女性たち……はっきり書くとバッチリメイクで気合の入ったものすごいミニスカートのギャルの方々が乗ってきた。

なんとなくおかしいなあと思っていると目があった。老婆心から……いやおっさんの余計なお世話と思いつつも「ねえ、あななたちはもしかして高崎に行くんじゃないの。この電車は反対方向の上州富岡行きなんだけど」とたずねてみると……もしやと思った通り「うちらこれから高崎に飲み行くとこ」なのだという。列車の進行方向と行き先が逆だ。

そうなんじゃないかと思ったんだよな。下仁田にこれからでかける服装に見えないもの。そう話したらウケてしまった。いや、笑いごとではなくて。

きっと、ふだんは列車に乗らないひとたちが、やって来た列車に飛び乗ってまちがえたのだろう。乗車位置もよくわかっていないようだったから。クルマではなく電車で飲みに行くのはちゃんとしていてりっぱなのだから、帰り道は気をつけてくれよな。

かくいう私は上州富岡でさらに下り列車に乗った。ギャルの子たちが上り高崎行きに乗るのは見届けた。上州富岡からは夕方の上り列車はほぼ座席が埋まっている。いっぽう、下仁田行きはがらがらだった。私は南蛇井で降りて歩くことにした。けれど、日没前にだいぶ雲が出てきてしまい、たいした写真にはならなかった。

■今日は電車に乗って見知らぬひととおしゃべりする日
この日はそのかわり、写真はあまり撮らなかったけれど、出会ったひとたちとなぜか話が弾んでしまう日だった。

駅で、あるいは沿線でカメラを構えていて、あいさつをきっかけに通行人の方と雑談になるということは私には少なくない。大きな一眼レフを提げて機材を満載にして三脚も持っているから、道を歩いているとめだつのだろう。

それに、私自身もあやしまれないように、道行く人たちとは目を合わせて笑顔をみせて、極力自分からあいさつをする。せいぜい会釈は欠かさない。それが地方私鉄沿線撮影のおもしろさでもあるしね。

ときどき、役立つことを教えてもらえることもあるのだ。



さて、農道で散歩をするひとたちと雑談をしたあとに列車を撮り、神農原まで歩いた。けれど、上り列車ですぐに帰ろうかと思っていたら、まず先にやって来たのが下り列車に充当されたデハ251+クハ303だった。フリー切符を持っていることだし、ひとのいないホームで待つのもつまらなく思えて、なんとなく下り列車に乗った。南蛇井で上り列車と交換したにもかかわらず、けっきょく下仁田まで乗り続けた。

■秋祭りの準備をする下仁田駅前はジブリアニメのようだった
そうして下仁田に着くと、駅近くの公民館では祭り囃子の練習をしている音が聞こえる。駅前はほとんど店も閉まっていて、下車したひとたちとその出迎えのひとたちくらいしか見当たらない。そんな、ひと気のない商店街に流れる祭り囃子がなんともいい雰囲気だ。

人の気配がしないのに、お囃子だけ流れているなんて。まるで『千と千尋』かなにかのようだ。勝手になにかを食べると豚にされるな、これは。

そこで、上り列車を待つあいだに駅周辺を歩いた。営業していたのはチェーンのドラッグストアとスーパーマーケットだけだ。そのドラッグストアでも、どういうわけかレジの方と話が弾んでしまって、けっきょく乗ろうと思っていた上り列車には乗れなかった。

この日は写真はたいして撮らなかったし、帰宅も遅くなった。でも、どういうわけだかかなり遠くに旅行をしたような楽しい気持ちになったから、まあいいか。そして、帰宅してからこうして話をしたひとたちを撮り忘れていたことに気づくのだ。

【撮影データ】
Canon EOS 6D Mark II/EF50mm F1.8 STM, EF70-300mm F4-5.6 IS II USM/RAW/Adobe CameraRaw